この記事のポイント:マンション売却で課税される「譲渡所得税」は、計算方法と特例を正しく理解すれば大幅に節税できます。沖縄の実例で計算式・税率・3,000万円控除・10年超軽減税率をわかりやすく解説します。
監修・執筆
【記事監修】中山 周治(宅地建物取引士 登録番号:(沖縄)第010386号)
不動産売却サポート沖縄(運営:株式会社センターマウンテン)代表|不動産売買歴20年以上・那覇市・豊見城市を中心にマンション売却500件以上の実績を持つ専門家。監修者情報はこちら →
「マンションを売ったら税金はいくら取られるの?」——売却を検討される方から最も多く寄せられる質問のひとつです。費用と違い、税金は金額が大きく・計算が複雑なため、知らずに進めると思わぬ納税額に驚くことがあります。
一方で、要件を満たせば3,000万円の特別控除によって税金がゼロになるケースも多くあります。沖縄のマンション市場は相場上昇が続いており、売却益が出やすい状況だからこそ、売る前に「税金の仕組み」を理解しておくことが重要です。
この記事では、譲渡所得税の計算式から減価償却費の求め方、各種特例、確定申告の手順まで、沖縄の具体的な数字を使いながらわかりやすく解説します。
📑 目次を開く
- マンション売却で発生する税金の種類
- 譲渡所得の計算式を徹底解説
- 減価償却費の計算方法(ここが肝心)
- 長期・短期譲渡所得の税率
- 沖縄の事例で計算シミュレーション
- 税金を大幅に減らす特例制度
- 確定申告の手続きと注意点
- よくある質問
マンション売却で発生する税金の種類
不動産を売却したときに課税される主な税金は以下の3種類です。このうち最も影響が大きいのが「譲渡所得税(+復興特別所得税)」と「住民税」です。
税金の種類:譲渡所得税 (+復興特別所得税)
内容:売却益(譲渡所得)に対して課税される所得税。2037年まで復興特別所得税0.315%が上乗せ
納税のタイミング:翌年の確定申告後
税金の種類:住民税
内容:譲渡所得に対して課税。所得税と合わせて計算する
納税のタイミング:翌々年6月〜(特別徴収)
税金の種類:印紙税
内容:売買契約書に貼付する収入印紙代(売却価格により異なる)
納税のタイミング:契約締結時
⚠ 注意:「売却益がゼロ以下(譲渡損失)」の場合、譲渡所得税・住民税は発生しません。ただし確定申告の手続きは損失が出た場合でも必要なケースがあります(損益通算・繰越控除の適用に申告が必要)。
譲渡所得の計算式を徹底解説
税金が「いくら」かかるかを知るには、まず課税の対象となる「譲渡所得」を計算する必要があります。
取得費に含まれるもの
取得費とは、そのマンションを購入したときにかかったコストの合計です。購入価格だけでなく、登記費用・ローン保証料・不動産取得税なども含めることができます。ただし、建物部分は時間の経過とともに価値が下がるため「減価償却費」を差し引く必要があります(次章で詳しく解説)。
譲渡費用に含まれるもの
売却にあたって支出したコストが譲渡費用です。主なものは次のとおりです。
- 仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税が上限)
- 売買契約書の印紙税
- ハウスクリーニング・リフォーム費用(売却目的のもの)
- 測量費・解体費用(該当する場合)
- 立退料(賃貸中の場合)
✔ ポイント:取得費が「わからない・証明できない」場合は、売却価格の5%を概算取得費として使うことができます(国税庁の規定)。ただし実際の取得費が判明している場合は、そちらを使った方が税負担が軽くなるケースがほとんどです。
減価償却費の計算方法(ここが肝心)
「取得費」を正確に計算するうえで避けて通れないのが減価償却費の算出です。土地は減価しませんが、建物は年数とともに価値が低下すると考えられているため、その分を取得費から差し引く必要があります。
計算例:RC造マンション・建物価格1,500万円・14年所有
那覇市で2012年に購入し2026年に売却する場合を例に計算してみましょう。
計算例RC造マンション 建物1,500万円 所有14年
- 建物購入価額:1,500万円
- × 0.9 × 0.015(RC造償却率)× 14年(経過年数)
- = 減価償却費 283.5万円
- 取得費に算入できる建物価格:1,500万円 − 283.5万円 = 1,216.5万円
✔ 注意:購入時の売買契約書や建物の評価証明書があれば、土地・建物の内訳を確認できます。内訳がない場合は固定資産税評価額の割合などで按分します。不明な点は税理士・不動産会社に相談しましょう。
長期・短期譲渡所得の税率
譲渡所得税の税率は、売却した年の1月1日時点で「5年超」の所有かどうかによって大きく異なります。
短期譲渡所得
所有期間5年以下
39.63%
所得税30.63%
(復興特別含む)+ 住民税9%
長期譲渡所得
所有期間5年超
20.315%
所得税15.315%
(復興特別含む)+ 住民税5%
10年超所有の場合はさらに有利な税率
居住用財産で10年以上所有した場合、3,000万円特別控除を適用した後の課税譲渡所得に対して、6,000万円以下の部分には14.21%(所得税10.21%+住民税4%)という軽減税率が適用されます。
課税譲渡所得の区分:6,000万円以下の部分
所得税(復興特別含む):10.21%
住民税:4%
合計税率:14.21%
課税譲渡所得の区分:6,000万円超の部分
所得税(復興特別含む):15.315%
住民税:5%
合計税率:20.315%
沖縄の事例で計算シミュレーション
実際の計算イメージをつかむため、沖縄県内での売却を想定した3つのケースでシミュレーションします。
事例①那覇市・居住用・14年所有|3,000万円控除適用
前提条件2012年購入:3,000万円(建物1,500万円・土地1,300万円・諸費用200万円)
2026年売却:4,500万円|所有期間14年(長期)|居住用
- 減価償却費:1,500万×0.9×0.015×14年 = 283.5万円
- 取得費:3,000万+200万-283.5万 = 2,916.5万円
- 譲渡費用(仲介手数料等):約141万円(4,500万×3%+6万×1.1)
- 譲渡所得:4,500万-(2,916.5万+141万) = 1,442.5万円
- 3,000万円特別控除適用後:1,442.5万-3,000万 = 0円(課税なし)
納税額
0円
3,000万円特別控除で課税所得がゼロに。ただし確定申告は必要。
事例②おもろまち・投資用・8年所有|長期税率20.315%
前提条件2018年購入:3,200万円(建物2,000万円・土地1,050万円・諸費用150万円)
2026年売却:5,000万円|所有期間8年(長期)|投資用(控除なし)
- 減価償却費:2,000万×0.9×0.015×8年 = 216万円
- 取得費:3,200万+150万-216万 = 3,134万円
- 譲渡費用:約159.5万円(5,000万×3%+6万×1.1)
- 譲渡所得:5,000万-(3,134万+159.5万) = 1,706.5万円
- 税額:1,706.5万×20.315% ≒ 約346.7万円
納税額(概算)
約346万円
投資用のため特別控除は対象外。長期税率20.315%で計算。
事例③豊見城市・居住用・3年所有|短期税率39.63%
前提条件2023年購入:4,500万円(建物2,800万円・土地1,500万円・諸費用200万円)
2026年売却:6,000万円|所有期間3年(短期)|居住用(控除適用)
- 減価償却費:2,800万×0.9×0.015×3年 = 113.4万円
- 取得費:4,500万+200万-113.4万 = 4,586.6万円
- 譲渡費用:約184.8万円(6,000万×3%+6万×1.1)
- 譲渡所得:6,000万-(4,586.6万+184.8万) = 1,228.6万円
- 3,000万円特別控除適用後:1,228.6万-3,000万 = 0円(課税なし)
納税額
0円
短期でも居住用なら3,000万円控除で節税可能なケースが多い。
⚠ 重要:上記シミュレーションは概算であり、個人の状況によって異なります。実際の税額計算は税理士または税務署に確認することをお勧めします。
税金を大幅に減らす特例制度
マンション売却の税金を大幅に軽減できる「特例」が複数存在します。要件に該当するかどうかを必ず売却前に確認しましょう。
★居住用財産の3,000万円特別控除
居住用マンション(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。最もよく使われる重要な特例です。
- 所有期間の長短を問わず適用可能(短期でも対象)
- 売却年の前年・前々年に同特例を使っていないこと
- 売却相手が親族・配偶者でないこと
- 居住しなくなった日から3年を経過した12月31日までに売ること
- 夫婦共有名義の場合は各自3,000万円(合計最大6,000万円)
★10年超所有軽減税率の特例(3,000万控除と併用可)
居住用財産を10年以上所有していた場合、3,000万円控除と併用して税率の軽減も受けられます。
- 3,000万円控除後の課税所得6,000万円以下の部分:14.21%
- 6,000万円超の部分:通常の長期税率20.315%
- 売却年の1月1日時点で所有10年超であること
- 適用にあたりこちらも確定申告が必要
★特定の居住用財産の買い替え特例
一定の条件を満たした場合、売却益への課税を新居購入まで繰り延べることができます(税金がゼロになるわけではありません)。
- 売却年の前年〜翌年の間に居住用財産を買い替えること
- 売却価格が1億円以下であること
- 所有期間10年超・居住期間10年以上であること
- 適用期限:2027年12月31日まで延長(令和5年度税制改正)
- 3,000万円特別控除・軽減税率との併用は不可
★譲渡損失の損益通算・繰越控除
売却で損失(譲渡損失)が出た場合も特例が使えます。
- 損益通算:給与所得など他の所得と損失を合算し、所得税・住民税を減らせる
- 繰越控除:損失が残る場合、翌年以降3年間繰り越して控除できる
- 対象:マイホームの売却で損失が出た場合(居住用が要件)
- 損失がある場合でも確定申告は必須
「自分の場合、どの特例が使えるの?」という疑問は、
不動産売却の専門家に相談することで明確になります。
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確定申告の手続きと注意点
マンション売却による譲渡所得は、給与所得とは別に確定申告する必要があります。特例を適用する場合も、税金がゼロになる場合も、確定申告は必須です。
1書類を収集する(売却後すぐに着手)売買契約書(購入時・売却時の両方)、登記事項証明書、仲介手数料・諸費用の領収書、固定資産税評価証明書などを準備します。
2申告書を作成する国税庁の確定申告書等作成コーナー(https://www.keisan.nta.go.jp/)で作成できます。「分離課税」の項目に譲渡所得を記入し、特例の適用書類も添付します。
3申告期限:翌年2月16日〜3月15日例えば2026年にマンションを売却した場合は、2027年2月16日〜3月15日が申告期間です。期限を過ぎると加算税・延滞税が発生するので注意。
4e-Taxで自宅から申告可能マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば、税務署に行かずにインターネット(e-Tax)で申告できます。
確定申告に必要な主な添付書類
書類:譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
入手先:国税庁ウェブサイト(無料ダウンロード)
書類:売却時の売買契約書(コピー)
入手先:契約時に受け取ったもの
書類:購入時の売買契約書(コピー)
入手先:購入時に受け取ったもの
書類:仲介手数料・各種費用の領収書
入手先:不動産会社・各業者
書類:登記事項証明書
入手先:法務局(1通600円)
書類:住民票(3,000万円控除適用時)
入手先:市区町村窓口
よくある質問
Q3,000万円特別控除を受けるための要件を教えてください
主な要件は次のとおりです。①自分が居住していた住居(マイホーム)の売却であること、②売却年の前年・前々年に同特例を使っていないこと、③売却した相手が配偶者・親族でないこと、④居住しなくなってから3年が経過した12月31日までに売ること、⑤売却した年に住んでいなかった場合でも、住まなくなった理由・期間によっては適用可能なケースがあります。詳しくは税理士・税務署にご確認ください。
Q転勤で引っ越した後に売却しましたが、3,000万円控除は使えますか?
転勤・離職などで住まなくなった後でも、「住まなくなった日から3年が経過した年の12月31日まで」に売却すれば控除を受けられます。ただし、売却時点で別の居住用財産(新居)をすでに取得している場合などは要件から外れることがあります。転勤の特殊なケースは税理士への相談をお勧めします。
Q確定申告しなかった場合はどうなりますか?
申告・納税をしなかった場合、税務署からの調査・通知が届き、本来の税額に加えて「無申告加算税(15〜20%)」と「延滞税」が課されます。不動産の売買情報は税務署が把握しているため、申告漏れは発覚します。特例を使って税額がゼロになる場合でも、確定申告の手続き自体は必要です。必ず期限内に申告しましょう。
Q夫婦共有名義のマンションを売却した場合の控除は?
共有名義の場合、3,000万円特別控除は各共有者が別々に適用できます。例えば夫婦が50%ずつ共有しているマンションを売却した場合、夫3,000万円+妻3,000万円の合計最大6,000万円まで控除が可能です。ただし、それぞれが居住していたこと、それぞれが確定申告することが要件となります。
Q売却損が出た場合も確定申告は必要ですか?
売却損が出た場合、「譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」を適用することで、給与収入などの他の所得と損失を相殺して税負担を軽減できます。この特例を受けるには確定申告が必要です。申告することで払い過ぎた税金の還付を受けられるケースもあるため、損失が出た場合も必ず確定申告することをお勧めします。
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